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映画『あしたのパスタはアルデンテ』 [★映画・ドラマ・テレビ]

●映画はそんなにたくさん見る方ではなく。テレビで深夜に放送されている映画を、ただ何となくつけて他のことをしていることが多い。BGMならぬBG「V」といったところ。面白そうなら手を止めて見ちゃうし、つまらなかったら目を離す。音がうるさかったりアクションばっかり続いていたら、まず見ないです(^^;)。

そんな私が昨日、つい最後まで見た映画。
  ↓
あしたのパスタはアルデンテ [DVD]

あしたのパスタはアルデンテ [DVD]

  • 出版社/メーカー: オンリー・ハーツ
  • 発売日: 2012/03/01
  • メディア: DVD
序盤途中から見始めたんだけど、「おや英語じゃない、イタリア映画?」「あらイケメン」(笑)とかって好奇心で画面を見ているうち、すっかり話に引き込まれまして。

ただ、恐らくこれは好き嫌いの分かれる作品でしょうね……。

ハリウッドの大ヒット映画とは違って、多くを語りきらないタイプ。重要なキーワードを鑑賞者に託し、「この状況と表情から、この人がどんな気持ちかをあとは察してね」みたいな。

想像の余地がある。逆に言えば、「答え」がない。

そこがヨイ、と思ったのだけど。映画にハッキリ形ある「答え」を求めている人には、モヤモヤする映画だったことでしょう。

個人的によかったところを、以下にチョロッとネタバラシ的に。

※あ、これから見てみようっていう方は、当記事ここから下&Wikipediaは見ない方がよいです。見る前には知らない方がより面白いであろう結末が、ガッツリ書いてあります。とくにWikipedia、「え、そんな断言できる描き方してたっけ?」と思うような、余韻を塗りつぶすような結論づけがしてある気がしまする(^^;)。

●舞台はイタリアの田舎町。超保守的で古くさい価値観を持つパスタ工場経営者と、その一家の物語。一応コメディ。けどにじみ出てくるメッセージに私は心打たれまして。

経営者のお父さんが工場を継がせたかった息子が二人とも同性愛者で、それを告白した長男は受け入れられず勘当されてしまう。残った次男は父の期待を背負うも、自分には別の夢があり、また事実を告白していないことから葛藤する。この葛藤する次男が主人公。

これがハリウッド映画だったら、「主人公が同性愛者である」というところに焦点を絞り、「それゆえに起こるドタバタ」を交えつつも「いいじゃないか同性愛という生き方でも」とあけすけに台詞で言わせそうな気がする(笑)。そういう簡単なことはしていませぬ。同性愛というのはこの映画の材料の一つでしかなく、テーマではないので。

テーマは、主人公のおばあちゃんが口にします。

・叶わない愛は終わりがない
・人の望み通りの人生なんてつまらない

お父さんが古くさくて陳腐な価値観の持ち主なのに、その母親であるおばあちゃんがとても進歩的で。ゆえに「人間爆弾」などと陰口をたたかれるのだけど、現代的な視点で見るとおばあちゃんの方がよほど「ことの本質」をよくわかっている。その生き様がとても素敵。あ、素敵……? 最後ちょっと、素敵かどうかわからないことになりますが(^^;)。筋はしっかり通っている……アッパレというか何というか……。

おばあちゃんが、孫の良き理解者なのね。で、一時的にパスタ工場の手伝いを始めた孫と、その相棒の女の子に、上記二つをそれぞれ話して聞かせるの。

前者は、成就しなかった思いは心の中に残り続ける、というニュアンス。おばあちゃんは実は、夫の弟が好きで。義弟への思いを残しながら夫と結婚。その「義弟への思い」が、当時の回想シーンとしてちょいちょい挟み込まれる。この(最初はナゾの)回想シーンの挟み込み方自体で「ああ、今でも鮮やかに思い出すほど好きだったのね……」ってわかる。

相棒の女の子はどうやら、次男くんが好き。でも次男くんは同性愛者。次男くんもちょっと揺れて、彼女といい感じになりそうだった。でも次男くんに会いに来た恋人(男性)との間には隙がない。

その隙がない二人の様子を見ている彼女の表情(というより表情を映している絶妙の間合い)から、複雑な心情が伝わってくるのが、個人的に「いいなあ」と。台詞なんかで説明しないのね。ああ、この子いま、自分の強力な味方になりそうだった次男くんが「そうではなかった」ことに落胆しているよね。でもただの落胆ではなく、おばあちゃんの「叶わない愛は終わりがない」って言葉をきっと思い出しているよね。つらいけど甘美な気持ちも少々交じっているかな。とにかく耐えているよね、複雑な心境よね……。 ←この「複雑な心境」が手に取るように伝わってきたので、なかなかの映画だな~と。

後者「人の望み通りの人生なんてつまらない」は、おばあちゃんが孫の次男くんに伝えた。「お父さんが望む通りの道を歩んで、それでいいの?」ってメッセージ。しかもおばあちゃん、自分も「家族の望み通り」生きることをやめちゃった……! すごい筋の通し方! 終盤、衝撃。シーンとしては穏やかなんだけど……やっていることと思想が過激(?)。

映画の原語タイトルが「爆弾」的なものだそうで、確かに「おばあちゃん爆弾」には強烈なインパクトが……。

最後の最後には、おばあちゃんの「思い」を成就させるかのように、今昔入り乱れ偏見の壁も越えた、ちょっとシュールなダンスシーンで終わり。ホント現実が、偏見なんかなくなって誰に気を遣うともなくこんなふうだったらよいのにね……との願いに見えました。家族が再び集まるシーンで、お父さんが苦々しい顔をしていたものの、お母さんが息子二人のところへ行き腕を組んだ……お母さんがおばあちゃんのあとを継いで(?)「偏見なき愛」を見せた感じがして、気持ちがほこっとします。

テーマ?

「人生ってこういう割り切れないものなんだよ」「それでも自分の道を歩んでいきましょうね」ってことかしらね? 
観た人それぞれが想像すればよいものであり、正解なんてありませぬ。とりあえず「私はそう思いました」ってことで……。

この映画、ひとことで言っちゃうと「イタリアの家族がさまざまなトラブルを乗り越えて結束するさまを描いた、ハートフルな群像劇」ってことになるかと思うんだけど……そんな言葉に納まりきらない、なかなか奥深い味わいがあったように思いました♪

星を付けるなら……5点満点中「★★★★☆」。1点マイナスしたのは、終盤の大事な場面で、ちょっとカメラがグルグル回りすぎて「早くカメラ止まらないかしら(^^;)」と嫌になったのでww あれさえなければ、私の中では5点満点です♪

言葉で語りすぎない映画が好きな方には、今さらですがオススメです(^^)。





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